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ニュピ(Nyepi) 
はじめてバリへ行ったときのことである。ベランダでコピ(バリ・コーヒー)を飲んでいたら、ロスメン(民宿)のおばさんが「明日はニュピだから、外へでちゃあダメだよ。」と告げに来た。おいおい、冗談だろっと思ったが、おばさんの顔はマジである。バリにはサカ暦、ウク暦と暦が2つあって、ニュピはサカ暦の新年にあたる。
ニュピの前日(大晦日)の夕方になると街角から鍋や釜かドラム缶でも叩いているような、ガンガンと打ち鳴らす音が聞こえてきた。一年の汚れや悪霊を追いだしてお清めを行うためだそうだ。そして夜には子供たちがオゴオゴと呼ばれる悪霊を型どったハリボテを担いで街中を練り歩く。そうか街で見かけた学園祭で見かけるような、チープな極彩色に彩られたポップで不気味なハリボテ(これがオゴオゴだった)は、これに使うんだったのか。
いよいよニュピの当日となった。朝食を頭に乗せて運んできたロスメンのおばさんが(バリの民宿はほとんどが朝食付)、「外に出ちゃあダメよ。」と例のマジな目で念をおしていった。この日は、みんな静かにし、瞑想をして一日を過ごすのが習わしらしい。村中の機能が停止し、村は完全な静寂につつまれている。この日は車の音も途絶えて、聞こえてくるのは、ときどき鳴く鶏の声ぐらいである。のどかなウブドゥが太古の昔にタイム・スリップした感じだ。すべてが合理化されアクセクと時間に追われながら日本で生活している私たちにも、一年うちで一日ぐらいすべての営みをやめて、自己を省みる機会があってもいいのではないか。こんな素敵な儀式が残っているバリは、ただものではないぞと思ったのだった。
感心しているのも束の間すぐに現実に引き戻され、「まてよ村中お休み、ということはレストランもやってない、ゆえに飯も食いに行けない。」という三段論法が成り立つ事実に気づいた。しかしそれは杞憂におわりゴハン時になったら、ちゃんとおばさんがナシ・チャンプルを運んできてくれた。
夜は明かりをつけてはいけないとのお達し。普段でも日本とくらべものにならないくらい、星のきれいなウブドゥであるが、今夜は特別にきれいである。夜の静寂をぬって、ときおりトッケイが鳴いている。

昆虫を捕獲した瞬間のトッケイ
(ギリ・トラワンガンにて)
ヤモリはよく見かけるが、
トッケイはなかなか姿を見ることができない。
トッケイは、普通のヤモリより数倍大きい。
私は肘から手先ぐらいの大きさのトッケーを
見たことがあるが、誰も信じてくれない。(¨;)
1997年のニュピは、4月9日である。その日に、バリに滞在する人は、こころ静かに自分の人生を振り返ってみるのも一興である。「じゃあウノを持ってゆこーっと!」言っているのはだれですか!
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