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 廸化街 


 私がはじめてこの街に迷いこんだのは、雨の日だった。目的もなく知らない街を彷徨うのが楽しみな私は、特別に何の予定もなかったので、ホテルのロビーから行くあてもなし街に飛び出した。
 台北駅に行き、遅めの昼食を行きつけの素食(菜食)レストランですませた。それから、駅の裏手に出て、バッグやアクセサリーなどを所狭しと並べて売っている問屋街をひやかした後、永楽市場に立ち寄った。永楽市場は、ひなびた感じの薄暗い市場で、カラスミの看板がやたら目に付く。友人の話だと(私は菜食なのであまりカラスミには縁がないのだが)台湾は日本に比べてカラスミが安いらしい。カラスミとはボラの卵巣を塩漬けにして干したものである。はなから買う気はないのだが、ひやかしに値段を聞いてみたら、「中ぐらいのもので500元。」と流暢な日本語がかえってきた。冷凍にしてあるカラスミは、なんだか臓器みたいで気持ち悪かった。
  永楽市場を通り抜け、嗅覚が何かを嗅ぎ付けたのをたよりに進んでゆくと、食料品ばかりを扱う店が両側にひしめきあって建っている通りに出た。ここが以前に車窓から見た活気のある街、廸化街(ディフォアーティエ)だった。通りを歩くと食べ物から発せられる独特の臭いが鼻を突く。どこかで嗅いだことのある臭いだと思ったら、アメ横の臭いだった。「そうか、ここは台北のアメ横なんだ」と、妙に納得したのだった。ある店は朝鮮人参、ある店は魚の乾物と、それぞれ扱う商品が専門化していて、雨の日にもかかわらず、狭い歩道は食料を買いだしに来た人で溢れていた。薬膳料理に使うのだろう、漢方薬などが並んでいる店先を見ていると、中国人の胃袋のタフさ加減と、食に対するこだわりの深さを実感する。

 廸化街は、古い町並みを遺した街だ。そこには外貨保有高世界2位を誇るアジアの優等生、台湾のルーツがある。エネルギッシュな庶民の生活の場である廸化街を台湾人と一緒に歩いていると、「日本も含めて、アジアはどうひっくり返ってもアジアなんだ」と、つくづく思った。以来、私は廸化街の大ファンになり、台湾へ行くといつも立ち寄っては、食料品を買い込んで日本へ送ることにしている。


廸化街で素食の材料がそろっている店

店名

住所

電話

義裕行

廸化街1段69号

25561477

全宏行

歸綏街218の1号

25578075

弘記素食

民生西路322号

25551210

弘茂商行

民生西路365号

25532398

おすすめの食材

 グルテン(植物性たんぱく質)、枸杞の実、ナッツ(松の実、クルミなど)きくらげ、薬繕の材料や漢方薬、めん類、
 すぐに帰国するなら冷凍の植物性ハムとかグルテンでできた魚もおすすめだ。